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寛解を目指すリウマチ治療

寛解を目指すリウマチ治療とは

現在の関節リウマチ治療では、「痛みが少し和らげばよい」という考え方ではなく、炎症をしっかり抑えて寛解を目指すことが大切になっています。 寛解とは、病気の活動性が極めて低く、関節破壊が進まず、日常生活をよりよい状態で送れることを目指す治療目標です。

完全に病気がなくなるという意味ではありませんが、将来の変形や機能低下を防ぐうえで非常に重要な考え方です。

当院では、「何となく少し良くなっているから様子をみましょう」といった、あいまいな評価で治療を続けるのではなく、関節の腫れや痛み、血液検査、患者さまご自身の実感、日常生活への影響などを、一定の評価法に基づいて確認しながら、寛解という明確な目標を目指して治療を進めていきます。

寛解にはいくつかの考え方があります

関節リウマチの「寛解」といっても、実際にはいくつかの側面があります。

臨床的寛解

関節の腫れや痛み、こわばり、炎症反応などが十分に抑えられ、診察や採血でみても病気の活動性がほとんどない状態を指します。 患者さまにとっては、「炎症によるつらさがしっかり抑えられている状態」と考えるとわかりやすいと思います。

構造的寛解

レントゲンや関節エコーなどでみたときに、骨びらん(骨の表面が削れて小さな穴ができる状態)や関節破壊が進んでいない状態を指します。 痛みが少なくても、見えないところで関節破壊が進んでいれば将来の変形につながるため、症状だけでなく関節の構造が守られているかを確認することが大切です。

機能的寛解

関節の症状が抑えられ、日常生活の動作や仕事、家事、趣味などが保たれている状態を指します。 たとえ採血データがよくても、患者さまが実際の生活で困っていれば十分とはいえません。 当院では、この機能的な面も大切にしながら治療を進めます。

Boolean(ブーリン)寛解について

関節リウマチでは、より厳密に「寛解」を判定する方法として、近年、Boolean(ブーリン)寛解という考え方が注目されています。 これは、圧痛関節数、腫脹関節数、CRP、患者全般評価といった項目が、いずれもごく低い基準を満たしている状態を寛解とする、非常に厳しい評価法です。

この基準を満たすことは簡単ではありませんが、その分、炎症がしっかり抑えられていることを客観的に確認しやすい指標になります。 当院でも、こうした明確な評価法を踏まえながら、見た目の印象や漠然とした感覚ではなく、なるべく客観的な根拠をもって治療の効果を判断していきます。

Treat to Target(T2T)とは

寛解を目指すうえで大切になるのが、Treat to Target(T2T)という治療の考え方です。 これは、関節リウマチ治療において「明確な目標を定め、その目標に届いているかを定期的に評価し、届いていなければ治療を見直す」という方針です。 単に薬を出して経過を見るのではなく、目標に向かって治療を調整していく点が大きな特徴です。

T2Tでは、一定期間ごとに関節の腫れや痛み、朝のこわばり、血液検査、患者さまご自身の体感、生活への影響などを確認し、寛解または低疾患活動性を目標として、必要があれば薬の増量、変更、追加を検討します。 現在の関節リウマチ治療では、この考え方がとても重要とされています。

T2Tの4つの基本的な考え方

T2Tには、治療のベースとして、患者さまと医療者が共有しておきたい、以下の4つの基本的な考え方があります。

A
関節リウマチの治療は、患者さまとリウマチ医が共に決めるべきです
B
最も重要な治療ゴールは、長期にわたって生活の質(QOL)を良い状態に保つことです。これは、次の事によって達成できます
  • 痛み、炎症、こわばり、疲労のような症状をコントロールする
  • 関節や骨に対する損傷を起こさない
  • 身体機能を正常に戻し、再度、社会活動や労働に参加できるするようにする
C
治療ゴールを達成するために最も重要な方法は、関節の炎症を止めることです
D
明確な目標に向けて疾患活動性をコントロールする治療は、関節リウマチに最も良い結果をもたらします。それは、疾患活動性をチェックし、目標が達成されない場合に、治療を見直すことによって可能となります

(公益財団法人日本リウマチ財団ホームページより)

さらにこの「T2T」を実施していくにあたり、「目標達成に向けた治療のための10か条」というものもあります。 以下がその10か条です。

  1. 関節リウマチ治療の目標は、まず臨床的寛解を達成することです
  2. 臨床的寛解とは、炎症によって引き起こされる疾患の症状・徴候が全くないことです
  3. 治療目標は寛解とすべきです。しかし、とくに病歴の長い患者さまでは困難な場合もあり、低疾患活動性が当面の目標となります
  4. 日常診療における治療方針の決定には、関節の診察を含む総合的な疾患活動性のチェック法を用いることが必要です
  5. 疾患活動性のチェック法や治療目標の選択には、個々の患者さまの状況:すなわち他の疾患があるか、患者さまに特有の事情があるか、薬の副作用に関する事情があるかなどを考慮します
  6. 疾患活動性は定期的にチェックし、記録することが大切です。中~高疾患活動性の患者さまでは毎月、低疾患活動性または寛解が維持されている患者さまでは6か月ごとに行うことが必要です
  7. 通常の診療で治療方針を決定する時には、疾患活動性に加えて、関節の損傷や日常生活動作がどの程度制限を受けているか、他の疾患があるかも考慮します
  8. 薬物治療の内容は、治療目標が達成されるまで、少なくとも3か月ごとに見直されます
  9. 設定した治療目標に到達した後には、関節リウマチの全経過を通じてその状態を維持し続ける必要があります
  10. リウマチ医は、治療目標の設定と「目標達成に向けた治療(T2T)」を患者さまと共有します

(公益財団法人日本リウマチ財団ホームページより)

目標を達成したあとにできること

関節リウマチでは、寛解の状態が続けば、使用している薬の量を見直したり、状況によっては一部のお薬を減量したり、中止を検討したりできることがあります。 もちろん、すべての方がすぐに減薬や中止できるわけではなく、病状の経過や使っている薬の種類、再燃のリスクを慎重にみながら判断する必要があります。

しかし、明確な目標を持って治療を行うことは、「今のつらさを減らす」だけでなく、「将来、より少ない薬で安定した状態を保つ」可能性にもつながります。 当院では、目先の症状だけでなく、その先の生活を見据えて、減薬や治療の最適化も視野に入れながら寛解導入・寛解維持を目指します。

当院が大切にしていること

リウマチ治療では、早期診断・早期治療がとても重要です。 関節の炎症が続くほど、見えないところで関節破壊が進みやすくなるため、我慢せずに早めに治療を始めることが将来の生活を守ることにつながります。

また、治療は薬だけで完結するものではありません。 必要に応じてリハビリテーション、生活指導、骨粗鬆症対策、感染症対策などを組み合わせ、無理なく治療を継続できるよう支えていくことも大切です。

当院では、リウマチ専門医として、「検査値だけよければよい」「何となく前よりよさそうだから大丈夫」とは考えません。 関節所見、血液検査、画像所見、患者さまご自身の実感、生活機能を丁寧に確認しながら、客観的な評価法に基づいて寛解を目指します。そして寛解を通過点と考え、痛みのない生活(病気のなかった頃の自分)を取り戻していく治療を目標としています。

仕事や家事、育児、通勤、趣味など、その方の生活背景に合わせて治療を考え、長く前向きに続けられる寛解導入・生活の維持を一緒に目指していきます。